山本公認会計士事務所

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令和2年10月から、居住用賃貸建物の消費税還付スキーム防止税制が始まります。

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居住用建物の賃貸は生活必需品であるという社会政策上の理由から、平成元年に消費税が導入されてすぐ、平成3年10月に非課税とされました。

大家さんにとって賃貸収入は課税売上にならず、そのため原則としてそれに係る費用についても課税仕入にはなりません。しかし居住用建物の消費税は額が大きいため、還付を受けるためのスキームがいろいろと取られてきました。

自販機スキーム

マンション購入の事業年度に自販機を設置し、課税売上割合を95%以上にして、建物建設に係る消費税の還付を受けるというものです。しかし建物を購入してから3年間通算で課税売上割合が50%以上変動すると、還付を受けた消費税を返納しなければなりません。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6421.htm

そのため還付を受けた2年目の間に課税事業者でなくなる届出を出して、その返納を回避していました。

平成22年度改正

そこで平成22年4月からは、課税事業者を選択してから2年間に建物を購入した場合は、建物を購入してから3年間は課税事業者の選択を取りやめることができなくなりました。

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/h22kaitei.pdf

しかしこの改正は、課税事業者を選択してから2年間は建物を購入せず、3年目以降に建物を購入するという方法で、簡単に回避できました。

平成28年度改正

そこでさらに平成28年4月から、1,000万円以上の建物を購入してから3年間は免税事業者になることが認められなくなりました。

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/h28kaisei.pdf

これにより課税事業者の選択をとりやめることにより消費税の返納を回避するスキームは封じられたわけです。

金地金スキームの登場

そこで課税事業者でなくなることで返納を回避するのではなく、課税売上割合を50%以上変動させないようにして、消費税の返納を避けるスキームが考えられました。家賃収入と同額程度の金地金の売却収入になるよう売買を繰り返すことにより、建物を購入してから3年間の課税売上割合が50%以上変動しないようにする方法です。

令和2年度改正

これを防止するため、令和2年10月以降に「居住用賃貸建物」を購入する場合は、仕入税額控除が認められなくなります。

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/r02kaisei.pdf

以下のように居住用の貸付のための建物ではないことが明らかな場合はこの対象にはなりませんが、実際に居住用として貸し付けているかどうかは関係ありません。

  • 建物の全てが店舗の事業用施設
  • 旅館やホテル
  • 棚卸資産として取得した建物のうち、売れるまでの間、居住用貸付を行わないことが明らかな建物

購入後、事業用賃貸などに変更した場合や建物を譲渡した場合は、仕入税額控除が事後的に認められます。この調整は3年経過時の課税期間において行います。ただし3年以内に譲渡した場合は、譲渡した課税期間となります。仕入税額控除できる額は、その建物に関する課税売上割合(事業用賃貸収入or譲渡収入÷(居住用賃貸収入と事業用賃貸収入or譲渡収入の総額))となります。

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